(14)非適格の請求書を受領した場合の対応?
インボイスの施行まであと半年強となりました。事業者の方々の関心は、インボイスの仕組みや登録申請といった制度の入り口の段階から、取引先との確実なインボイスの取り交わしの準備といった実務的なところに入ってきている感想です。ちょうど税理士事務所の繁忙期になるところ、今年はインボイスの対応とそれが重なることは覚悟していましたが、果たしてどのような年度末になるのでしょうか。
さて、インボイスの要式を満たさない請求書や領収書を受領した場合、買い手側はどのような対応をしたら良いでしょうか。この点、現行の区分記載請求書等保存方式で認められていた、受領側での一部の項目の追記は、インボイス制度のもとでは認められなくなります。そうなりますと、仕入税額控除のためには、そのような(非適格な)請求書などを受領した場合は、インボイスの要式を満たした請求書や領収書を改めて発行してもらうよう、相手方に求める必要があります。
ところで、一部の特例が認められる場合を除いて、インボイスをもらっていないにもかかわらず、あるいはインボイスの要式を満たさない請求書や領収書をもとに仕入税額控除をして申告した場合、その申告は過少申告となります。税務調査でそのような指摘がされた場合、果たして8割控除の経過措置を用いた修正申告ができるでしょうか。
この点、8割控除の経過措置は、その経過措置の適用を受けることを明らかにした帳簿の保存が必要とされています。そこで、税務調査において、インボイスの交付を受けていないとの理由で当初申告の仕入税額控除が否認された場合、あらたに仕入税額の8割相当額を控除するとした修正申告は認められないものと考えます。修正申告にあたって帳簿をさかのぼって書き換えることはできませんから、帳簿記載が要件となる8割控除の経過措置の適用は認められない(あと出しの適用はできない)との解釈が相当だと思います。
そこで、インボイス施行から最初の3年間は8割控除の経過措置を一種の安全弁のような存在と考えるのは、いささか楽観的なシナリオにも思えます。せっかくの準備期間が設けられているところ、要式を満たしたインボイスの保存が制度開始の段階から重要であるとの認識で、取引先との折衝も含めた準備にあたっていただくべきところだと思います。
2023/01/16、2023/03/31内容を改訂しました